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2008/04/07

朝っぱらから

訃報が入る

もう慣れているのでそんなに驚かない

それに まあ 
もう だいぶまえにリタイアした
おばあちゃんだったしね

好きに生きた人だったし
看護してくれる近しい人もいたわけだし

孤独死じゃなくて良かったな……

というのがいちばんの感想だった


独身を通した人だったから
身につまされ ずっと気にしていて
ときどき 消息を尋ねてはいたけれど

誰も 長いあいだ 音信不通で
どうしているのか知らなかった人


その人の家にお邪魔したのは
中学二年生の夏のことだったと思う

本棚にずらっと並んだ日本美術大全集
スゲー垂涎のマナコで眺めていたら

あげようか? と。

もう読まないしいらないから
よければ今度とりにいらっしゃい

といわれ 大喜びで家に帰ったら

忘れもしない

当時は鬼母だったマザーに
「とんでもない! ダメ! 絶対!」

と怒られて


彼女とわたしとのあいだでは
ちゃんと約束をしたのに

結局 取りにいけなかった

当時の恨み
実はいまだに忘れていない(笑)


スモッグにかすんだ夏の空気
行き交う車のクラクション

遠くに走るトラックのエンジン音と
迷路のような細い路地
ひなびた路地裏にこもる生活の匂い

古いアパート 木造のドア
陽に焼けた畳
その上にのった
赤に群青の模様が入ったじゅうたん

きらめく埃をただよわせていた午後の空気

本棚には白い背表紙の美術全集
机には大型の和文タイプライター

ゆっくり首をふっていた扇風機
小さな窓から覗く白い空
汗をかいている麦茶のコップ

その人は 楽しそうに
仕事の話をしてくれた

和文タイプライターを叩いてみせた姿
文字を一つ一つ拾っていく仕事

宮沢賢治の童話と
イメージがひとつに重なる

永遠に失われた夏


死んだらみんな 仏さん

ひとつの物語の終わり


さようなら

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