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2008/07/08

キリング・フィールド

さいきん知ってかなーりショックだったこと。

キリング・フィールドでカンボジア人ジャーナリストの通訳役をやっていたハイン・S・ニョール……殺されてたんだね……。コカイン中毒の少年強盗たちに、というのが、もう、なんとも云えない。彼は仏教徒で、「自分はきっと前世で罪を犯したから今世は大変な目にあったんだ、でももうカルマは返せたんだと思う」、と云っていたのに。

ニョールは産婦人科医だったんだけれども、ポル・ポトが支配したカンボジアではインテリが敵とみなされ虐殺されたので、(めがねをかけているだけで高等教育を受けた証拠として殺される可能性があったので)、身分を隠して、それで奥さんと赤ちゃんが(たしか出産で)どうしようもなくなったときにさえ、自分が医者とわかれば家族全員が皆殺しにされるので必要な手当てしてやることもできず、結局ふたりとも死んでしまった――という人なんだよ。

その後は4年間もクメール・ルージュの支配下に置かれて、ようやく逃げて、アメリカにわたって、その後たった16年でコドモに殺されてしまうなんて。1996年2月、享年55歳――大虐殺は1975年に始まって、当時の子どもたちは一箇所に集められ、銃を持たされ、クメール・ルージュの命令で大人たちを処刑してもいた。わたしはフラワーチルドレン世代でもあるけれども、この子どもたちとも同じ世代なのだ。

実はキリング・フィールドはわが人生ベスト・スリーに入る映画だったりする。

じっさい衝撃のあまり、実はその後2度とは見られないんだけれども――もうちょっとしたら見る予定だけれども(倍の年齢まで生きていたら見ることにしていたのだ)……たぶんこれは人生に影響を与えたという意味ではまちがいなくベストの映画なんだよね。

史実とは違う市街戦の描写があって、おまけにストーリの軸となる友情は実際的にはなりたっていなかった(米国人側の勝手な差別意識による作られた友情物語/確かにそうとも云えるが……)、というのが真相らしいんだけれども(それを知ってかなーりかなーりかなーり悲しかった/でも、モデルになったディス・プランはちゃんと亡命しているしアメリカでジャーナリストになってるし、事実と映画が違うと訴訟起こしたわけでもないからホントのところはわからん)、大作4時間、まんじりともせずに弟と二人で見続けた映画なのだ。

映画では、実際に起こった大虐殺のせいぜい2、3割しか描写していない、ともいう。この映画を製作中に「実際はこんなもんじゃない、もっとひどいんだ、違うんだ」とニョールは監督とかなりぶつかったともいう。違うと思う。まちがいなく。

抑圧された人間は弱いものへとはけ口を見出す。ほとんど、どんな人でも変わりない。わたしもそうだ。平時にいい人なのは当たり前なのだ。だからできるだけ、戦争や紛争はないほうがいい。人が人を殺すのが当たり前の世界ではないほうがいいと思う。体さえ生きて、頭がなんとか動くなら、殺したり殺されたりするよりほかに、なにかちょっとでもステキなことができるはずなのだから。

映画のデキとしては、政治的な相関関係に弱い上、特に友情の物語をメインにスポット当てたから、あれだけヒットしたんだ、ということ(ハイすみません。わたしかなり長いことベトナムの話だと思い込んでいました)――それがどうやら米国人お手並みの「われわれ米国人は素晴らしい」的フィクションだったらしいとわかったのは相当ショックだったんだけれども、その「ストーリ」によって世界中の人たちが何が起こったのか知った功績はとにかく認めるべきだと思うよ。(うーん、微妙なところだなあ――西条八十の高貴なる幻想ってところか……今(笑)一生懸命テラーと受け手の自分を納得させようとしているのだ)

アンコールワット見に行くのもいいけど、それだったらせめてこの映画見てから行ってほしいと切に願う。まったく歴史を知らずにお出かけして、帰ってからも良かったよ~だけで終わるのはせいぜいユースパスが使える25歳までじゃないかなあ……とも思ったりする。まあ、あんまり人のことは云えないけどね。

ニョールは本も出している。
「キリング・フィールドからの生還」(1990/光文社)Haing S. Ngor 
もう古本で高値。PBとたいして金額が変わらない。図書館か……無理しても本人の言葉で読むか悩みどころではある。

わたしは来世を信じると今をないがしろにする可能性があると思うから個人的には前世・来世とりあえず信じない派だけれども――遅ればせながら――彼が信じていたというのなら、確かに彼のカルマは今世で返し終わったのだと思いたい。今度は平和な世の中で幸せな人生を歩めるにちがいないと祈りたい。あなたの姿は素晴らしかった。ありがとう。

そして、実は、ニョールの役のモデルとなったジャーナリスト、ディス・プランも2008年3月30日ニュージャージー州の病院で亡くなっていたのだった。享年65歳――世は二十一世紀になってもいまだに紛争の大地である。

ほんとうに人間はダメだ、情けない、思想は良くても扱う人間そのものがアキマヘン、と思っていたら、仏陀はちゃんと四苦のなかに「生」を入れていた。四苦八苦の四苦、「生・老・病・死」。生きることそのものも人生の四つの苦痛のなかに入っている――というのに改めて気づいて、仏陀スゲエさすがだなあ、といまさらながら感心したりして。

うむむ――しかし、水清ければ魚住まず、ってなこともちょっと思ったりはするけれどもな。でも、死んだらみんなホトケさんだしなあ。と、なんだかまとまりがだんだんつかなくなってきたぞ。まあいいや。ベストなだけに力が入ってしまった。

ニョールさん、プランさん、願わくば あなたがたがくぐりぬけたと同じ苦難の道を歩むチベットの人たちを助けてあげてください。あなたたちの来世が素晴らしいものでありますように。

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